学校じゃ教えられない! 最終話

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綺麗にまとまっていたけど、ちょっと綺麗すぎたかな。終わり方は何パターンか考えていたらしい(個人的にはその中でいちばんシビアなパターンが見たかった)。全部をうまくまとめるために秒単位でぎゅうぎゅうに詰め込まれているような印象で、カット尻が切られて余韻を残せていない箇所がいくつかあったのが残念。
それぞれのカップルは最後まで本当に魅力的で、特に変態きよし(柳沢太介)には笑わせてもらいました。信太郎(法月康平)と真帆(夏目鈴)の2人がお互いの感情を不器用にぶつけ合う場面が好きで、第4話のときもぐっときたけど今回もやっぱり泣けた。この2人は地味で目立たないけれどなかなかいいものを持っていると思う。真帆が走り出す前にふたたび髪を結ぶところとか静也(前田公輝)が自慢の前髪を切るところとか、このドラマはこういった細かい部分の描写が丁寧で感心することしきり。
8話の演出の失敗でうまく描けていなかった影山先生(伊藤蘭)→舞ちゃん(深田恭子)→灯世(夏未エレナ)の関係性が今回きちんとフォローされていたのもよかった。灯世は昔の舞ちゃんなんだよね。影山先生が最後に言った「学校は生徒が主役。教師は黒子」という言葉はこのドラマのコンセプトを明確に表していました。
再度登場したフィーリングカップル5対5はよかったけど、並木道での別れの場面における一樹(中村蒼)の演説はさすがにちょっとくどくて、あそこは舞ちゃんへの一言と成長した10人の顔をしっかり映せばそれで十分だったのではないだろうか。みんな初回とは顔がぜんぜん違ってたもん。その顔が撮れれば十分でしょう。そしてその分の時間を使って、一樹がいなくなってからの他のメンバーの動向をもう少し見せてほしかったような気がする。
あとはやっぱり瞳(朝倉あき)と一樹の『ラストダンスは私に』。あのシーンはこの最終話いちばんの見せ場だったと思うんだけど、おそらくは尺の都合であっさり短めにまとめられていたのが非常に残念だった。あのダンスは1曲丸々ワンカットの長回しでじっくり撮ってそれをそのままフルで流してほしかった。そうしたら絶対、号泣したのに。。。あれは瞳と一樹2人にとっての、舞ちゃんと社交ダンス部10人にとっての、本当の「ラストダンス」だったんだから。もったいないです。
その瞳と一樹の関係についてはどうも釈然としないものが残る。なぜ釈然としないのかといえば、第7話の「恋の終わり」の描き方があまりにも見事だったから。ああいう「終わり方」をした2人はそのあと恋愛関係にはならないと思うんだよね。たぶん脚本を手掛けた遊川和彦氏も当初は2人をくっつけるつもりはなかったのではないかと思う。恋愛とはまた別の、もっと確かな信頼関係を提示したかったのではないだろうか。でも7話の放送後に「あれじゃ瞳がかわいそうだ!」みたいな声がたくさんあったから、そのへんを曖昧にしたまま最後の最後までひっぱる形になってしまったんだと思う。フィーリングカップルと並木道での演説場面で一樹から瞳への言葉だけがすっぽり抜けていたところに脚本家の苦悩がうかがえる。
ただラストのキス自体は例によって複雑ですごくおもしろかった。あれは単純なハッピーエンドではなく、やはり瞳にとっては「終わりのキス」だったと思うんだよね。第7話の一樹と叶夢(森崎ウィン)のキス、第9話の瞳と夏芽(三浦葵)のキスと同じように。瞳はあの最後のキスで一樹と出会っていっしょに過ごしてきたすべての時間、つまり第1話から舞ちゃんや社交ダンス部のメンバーみんなと通り過ぎてきたすべての瞬間に、まるごと別れを告げたのだと思う。だからドアが閉まり一樹の乗った電車がだんだんと遠ざかっていく姿を見つめる瞳の表情はなかなか笑顔にならなかった。
しかし一樹にとってはそれは「終わりのキス」ではなく「はじまりのキス」だった。以前は自分と叶夢の間にだけ存在していた「世界」に、瞳という「他者」がはじめて入ってきたその瞬間。そのまぶしさ。「本当のファーストキス」。このドラマのキスのとらえ方はどれも本当に見事だったと思う。



それにしても名場面だらけのドラマでしたね。

、、、どの場面も本当に鮮烈で思い出すだけで泣きそうになる。正直言って今のテレビ業界がこんなピュアで真摯な愛すべき青春ドラマの秀作を作れるとは思ってもみなかった。視聴率は苦戦したようだけどそれはあまり関係ない。あの『白線流し』だって今じゃ名作扱いだけれど本放送時は視聴率が伸びず苦労したのだ。そんなもんです。個人的に『学校じゃ教えられない!』はある面では『白線流し』以上の作品だと考えていて、たとえば第7話なんかは『白線流し』よりもずっと深い部分を描くことに成功していたと思う(第7話は堀禎一監督『妄想少女オタク系』のすばらしさがわかる人にはぜひ見てもらいたい)。ホント、おみそれしました。


スピンオフ最終話
http://www.dai2ntv.jp/p/z/130z/index.html
3年後の後日談みたいになっているんだけど、これは正直、蛇足な印象。これって遊川氏が本編で描いてきたこととは微妙にズレているんじゃないだろうか(スピンオフの脚本を書いているのは遊川氏とは別の人)。「本編のつづき」としてではなく、あくまで「番外編」として見るべきでしょう。


瞳と一樹オールアップの記事
http://www.ntv.co.jp/gakkouja/staff-diary/2008/09/7367.html
朝倉あきちゃんからのメッセージ
http://ameblo.jp/asakura-aki/entry-10140409496.html
http://www.ntv.co.jp/gakkouja/class-diary/2008/09/7417.html
いい文章だね。あきちゃん、次はやっぱり映画でしょう。そして来年の映画賞で新人賞をとれ! あきちゃんはどんなタイプの役柄を演じても自然と自分のものにしてしまえる人だと思います。あきちゃんの芝居はしなやかさと硬質な芯の強さを絶妙なバランスで併せ持っているからね。あの『彼方からの手紙』ではファム・ファタール的な役割まで演じ切っているわけだし。個人的には『学校じゃ教えられない!』第7話で垣間見えたあきちゃんの内面に眠る激烈さにとても惹かれます。テレビドラマに関してはみなさん言っていますが「NHK朝ドラのヒロイン」はたしかにあきちゃんにぴったりだね。そういうところはやはり斉藤由貴さん路線かな。