見たもの

谷村美月の正しい使い方」を心得ているという意味では『カナリア』以来の作品。やっぱり美月ちゃんはこうでなくちゃ。
映画の前半でひたすら全力疾走する美月ちゃんの姿は、「喜怒哀楽そのもの」(塩田明彦)というよりも、まさに「映画」の「身体性」そのもの、「運動」そのものだ。美月ちゃんがただ「走る」だけでそれは「映画」になる。そこでは小手先の「演技力」など問題にならない。その「アクション」の明快さ、美しさ。
残念なのは後半に入るとストーリー上の「種明かし」に終始してしまい、映画の「身体性」や「運動」が急速に鈍ってしまうこと。前半のイケイケなノリで全編ぶっ飛ばせばよかったのに。とはいえ、説明台詞をすべて美月ちゃんに言わせる=「フィクション」を一身に背負わせるという確信犯的演出もまた『カナリア』マナーだ。
というわけで、この作品はハリウッドでリメイクするとよいと思う。オチの爽快さも実にアメリカ映画的だし。監督は『セルラー』『スネーク・フライト』のデヴィッド・R・エリスで!